社員が不妊治療と仕事を両立できる会社をつくる
こんにちは。さくら橋社会保険労務士事務所 八木朋子です。
今回は、不妊治療を受ける社員の働き方について考えていきたいと思います。
厚生労働省の、令和5年度「不妊治療を受けやすい休暇制度等 環境整備事業」における不妊治療と仕事の両立に関するアンケート調査結果がまとめられました。
調査結果のポイント(厚生労働省HPより)
- 不妊治療を行っている従業員が受けられる支援制度等がある企業の割合は26.5%
- 不妊治療をしたことがある又は近い将来予定していると答えた人の割合は14.5%
- 不妊治療をしたことがあると答えた人のうち、不妊治療と仕事の両立ができずに仕事を辞めた人は10.9%
- 労働者が、行政に望む支援として一番多い回答は、「企業における不妊治療と仕事との両立を支援するための勤務時間、休暇等に関する制度の導入を促す」
私見
この調査において私が着目した点は、不妊治療経験者のうち、不妊治療と仕事を両立している(していた)人が55.3%にとどまったことです。
残りの人は、「両立できず仕事を辞めた」(10.9%)、「両立できず不妊治療をやめた」(7.8%)、「両立できず雇用形態を変えた」(7.4%)、「治療当時は働いていなかった」(18.7%)でした。
不妊治療は、頻繁な通院が必要であり、精神的な負担も大きいと言われています。
薬の副作用があったり、来院日が直前にならないと分からないなど、仕事との調整に苦労する場面も多く聞かれます。
雇い主側の組織としては、柔軟に仕事を調整できる環境を整えることが必要ですね。
また、不妊治療をしている(予定がある)人は、そのことを、47.1%の人が上司や同僚に伝えないとのことです。
このことから、組織は、直接の要望がなくても、不妊治療を受ける人向けに働き方を整えるニーズが、(今後入社してくる社員を含め)あると思っていただいてよいでしょう。
そこで、以下のような制度を、御社のスタイルに合わせて取り入れてみてはいかがでしょうか。
現状ある制度を応用する例
- 有給休暇を直前でも申請できるようにする
- リモートワークの活用
- 短時間勤務制度や所定外労働時間制限制度の対象を広げる など
新しく制度を作る例
- 時間単位の年次有給休暇取得制度
- フレックスタイム制度
- 時差出勤制度
- 不妊治療に特化した休暇制度、休職制度
- 再雇用制度 など
不妊治療のために職場環境を整えて、会社がもらえる助成金もあります(両立支援等助成金 不妊治療両立支援コース)。
【こちらは、実際に従業員が不妊治療のために休暇制度等を利用した場合に受給できるものです。
名古屋市のお客様で、こちらの助成金を利用して休暇制度を採り入れられた会社があり、従業員から好評だったとのことです。】
制度を変更・新設した際には、従業員の皆さまに、新制度の趣旨を説明することが必須です。
さらに、勉強会を開催するなどして、従業員相互間の理解を深める機会を設けると、なおよいでしょう。
また、制度の変更・新設に合わせて、労使協定の締結、就業規則の変更が必要になることが多いので、ご注意ください。
ご不明点がありましたら、お気軽にご相談ください。
厚生労働省HPは、こちらをご覧ください。
「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」結果について」
愛知労働局HP 助成金情報はこちらです。
投稿者プロフィール

- 社会保険労務士
-
さくら橋社会保険労務士事務所 代表
「組織を人から元気に!」をモットーに、労務トラブルを予防する細やかな労務管理、従業員のモチベーションに配慮した働き方の提案、組織を元気にする就業規則の作成など、トータルな関わり合いを通じ、組織の従業員満足度&定着率アップに貢献するため、日々励んでおります。
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